51.9% : 48.1% で、イギリス国民はEUを離脱する道を選択した。
51.9%の人々の生活スタイルと日常の関心事について
想像を働かせて仮定を立ててみると自ずと結論が見えてくる、
ごく当たり前の投票結果のような気がしてきた。
1. 日々の生活で、住居費と食費と100円ショップ(Pound Shops)での日用品の値段が
主な心配事となっている。
2. ヨーロッパ大陸メーカー、日本メーカーの自動車、高級工業製品、高級ファッション製品などは
買えないので、ほとんど関心がない。
3. より低価格なアジア・アフリカ製品が、普段の生活での関心事となっている。
4. 外国語に全く関心がなく、一度もヨーロッパ大陸を旅行したことがない。
5. 英語圏の他の国への関心もなく、一度も海外を旅行したことがない。
6. 食感がCreamyすぎるフランス料理とOilyすぎるイタリア料理は口に合わない。
中華やインドカレーの持ち帰り(takeaway)や寿司ランチボックスが、
サンドイッチとフィッシュ&チップス・パブ飯以外では好きな料理。
7. 「EU市民では決してなく、イギリス連邦市民であり家系永代にわたって続くAnglo‐American互恵経済圏の一員である」 という自覚の方がはるかに強い。 ...
つまり51.9%のイギリス国民にとっては
グローバル化もしくはEU参加によって恩恵を受けているという生活実感が非常に乏しく、
1. 金融グローバル化とリーマンショックによって住宅ローンが返済不能となり、損失を被ったあげく社会的信用も失った。
2. 不動産投資グローバル化によって住宅価格が高騰したので、EU離脱によって何としてでも住宅価格を下落させたい。
3. EUの漁獲量規制と農業規制は水産・農産物のEU各国からの輸入押しつけなので、
EU離脱によって食料自給率を上げて何としてでもサンドイッチとフィッシュ&チップス・パブ飯の値段を下げたい。
4. 中東欧EU各国からの移民によって年金・社会保障費を奪い取られる前に、EU離脱によって何としてでも強制送還して帰国させたい。
5. ブリュッセルのEU本部官僚の手から、イギリス連邦の政治運営と法制度を何としてでも取り戻さなければならない。
といった、EU参加によって受けた被害に対する抵抗感と反発心だけが心に残る結果となっている。
ドイツ・オーストリア・オランダ・フランス・イタリア・スペインやポーランド・チェコといた他のEU加盟国においても、
「何が何だか分からない正体不明な外国による権益や外国との関係よりも、国民と国益の方を力ずくででも優先させるぞ !!!」
「不良移民・不良外国人を力ずくで叩き出してやる !!!」という
ごく自然な民族主義的な風潮が強まっていることを考えると、
「イギリスのEU離脱が他のEU各国離脱へとドミノ倒しで波及し、いよいよEUは崩壊を迎える」シナリオもあり得る時代に入ったと感じる。
さらによく観察し考察してみると、
生まれた頃から慣れ親しんできた地域と民族への強固な帰属意識・土着の生活習慣や文化・州政府や地方共同体の権限・各国の習慣と歴史文化に根ざした国内法制度
さらには、道路や森林・河川の向こう側に住む異民族との間での些細な諍いが大規模な紛争に拡大して屈服した場合に自民族が同化され消滅してしまうことへの歴史的な危機意識は
そう簡単に単純なグローバル化の線形一次方程式によって変えられるものでは決してない。
いくら最適な共通政策を求めようと努力しても、
結局のところは、
m行(196カ国)と n列(各国の政策の優先度レベル)の行列式の対角化ができず計算が収束せず最適解が一意に定まらず、
グローバル化の妄想と幻影という正体が明るみになったと強く感じる。
- When in Rome, do as the Romans do!